袖のあきに使える「イッテコイ」の縫い方について紹介します。
イッテコイは簡単なため、よく使われる仕様です。
しかし、縫い代が短くなる部分があるため、うまく縫えたように思えても、すぐに「ほつれてしまったり」といった失敗が多い仕様でもあります。
今回は、なるべく「ほつれにくい」仕上がりになるように、手順を丁寧に解説しています。
説明の画像では、イッテコイ部分周辺のみを四角に切り取った布で撮影していますが、
袖全体を想像してもらえればと思います。
(※画像では、見えやすくする為にあえて違う色の糸を使用しています。)
目次
イッテコイの縫い方・作り方| サイズについて
今回は、下記のサイズで作成します。
・切込み = 7cm + 縫い代1cm ⇒ 8cm
バインダー始末(パイピング始末)をするための布のサイズは、下記のとおりです。
・パイピングの幅0.7cm × 4(4つ折りにするため) =2.8cm + 余裕0.2cm(布の厚み考慮) ⇒ 3cm
・長さ = 8cm × 2(往復で行って帰るため) =16cm + 余裕1~2cm(長めにしておいて、後でカットする) ⇒ 17~18cmくらい
イッテコイの縫い方・作り方| 「バインダー布」の準備(四つ折りにする)
バインダー布は、共布(袖を作るのと同じ布)を裁断して用意しました。
バインダー布は、バイアス地でも縦地でも、どちらで裁断してもよいです。
今回は、縦地で裁断しています。
それでは、バインダー布を、アイロンで折っていきます。
まずは、半分に折ります。
裏面が上になるように置き、半分に折ります。折り畳んだ時に、表面が外に出る状態です。
ちなみに、アイロンで折り目を付けるときは、折った後、冷めてから開く方が折り目がしっかり付きます。
温度が冷める前に形を戻してしまうと、折り目がしっかり残りません。
半分に折った後に開き、折り目より1mmあけて、更に折ります。
反対側も、中央の線に対して1mm開けて、折ります。
更に、最初に折った中央の位置で、折り畳みます。これで四つ折りの状態になりました。
中央に対して1mmずつ短めに折っているため、
中で布端がぶつかることなくスッキリと四つ折りできています。
- 山折りになっている方が「表面」です。
- 谷折りになっている方が「裏面」です。
イッテコイの縫い方・作り方| 裁断~「ほつれ止め」のステッチ
重要
型紙を裁断したりする前に、袖にイッテコイを付ける場合には、左袖と右袖で、作りが逆になるため、間違えないように注意しましょう。
また、基本的には、あきは袖の後ろ側につきます。その点も気を付けておきましょう。
出来上がりをイメージして、間違いがないように作業を進めていきます。
袖の型紙で布を裁断して、印を書き込みます。
切込みの印の書き方。
- 予め型紙に目打ちなどで穴をあけておき(※布を傷つけないために、型紙を使う前に穴をあけておく。)、
- その穴から、型紙の下の布にチャコペン等で印を書きます。
(※もしシャツなどの袖を作るのであれば、布を二つ折りにしておき「左右の袖」を一気に裁断することが多いかと思います。
その場合は、穴からチャコペンで写し取るのではなく、しつけ糸を使って切じつけで2枚同時に印を写し取る方がよいと思います。)
こんな感じで、点が写し取れます。
(ちなみに、今回は「布の裏面」を上にした状態で、裁断と印つけを行っています。)
2つの点同士を繋いで、線にします。
切込み止まりより1cm下の位置に、2つ点を書きます。(線を挟んで、2mmずつ横に開いた位置)
この印を目印にして、ほつれ止めのためにミシンを掛けます。
下記のように、ほつれ止めのためのステッチをします。
特に、下記画像の「先端の3つのピンクの印の▽」の所は、縫い目の長さを小さめにすると、よりほつれ止めの効果が高まると思います。
一番、縫い代が短くなってしまう所なので。
ほつれ止めステッチをした所です。
「成功例」と「失敗例」です。
右側のNG画像のように、三角の先のステッチが重なってしまうと、良くありません。
綺麗に左側のOK画像のように縫うには、方向転換をしたときに、布をしっかり整えて、たるみを取ってから縫い進めることです。
また、その時の1針目は少し角度を外側に広めにとるようにして縫い進め、2針目から本来の目的の方向へと方向修正をするのがおすすめです。
切込みの印に沿って、切込みを入れます。
ほつれ止めステッチの頂点より、2mm手前まで切り込みを入れます。
切込みが浅いと、うまく縫えなくなりますし、
切込みが深すぎても、ほつれやすくなってしまいます。
イッテコイの縫い方・作り方| 「イッテコイ」を縫う
それではいよいよ、バインダー布と、袖を縫い合わせていく作業に入っていきます。
まずは、バインダー布の、右端の縫い代の幅を測ります。 今回は6mmでした。
大体6~7mm程度になっているかと思います。
(布の厚みにより、折った時に厚みに幅が取られたりして、多少の誤差が出る可能性があります。)
袖は裏面を上にして置きます。バインダー布は表面を上にして置きます。
「中表」で合わせます。
切込みの角端と、バインダー布の角端を合わせます。
その状態のまま、ミシンにセットします。
端を合わせた状態で、
バインダー布の端から5mmの位置にミシン針を下ろし、押さえ金も下ろします。
※5mm = バインダー布の縫い代の幅より、1mm引いた数字です。(今回は6mmの縫い代幅だったので、6-1=5mm)
ミシン針を刺して押さえ金も下ろすと、布端が固定されます。
その状態から、切込みのもう一方の端を持ち、切込みを開いていきます。(※布が伸びてしまわないよう、強く引っ張らないように)
切込み中央にから布溜まりができますが、
大きな一つの膨らみにならないように、複数の均一な膨らみになるように分けてボリュームを減らします。
- 切込みの中央(切込み止まり)の「ほつれ止めステッチ」がバインダー布の端から5mmの位置に来るように、マチ針で固定します。(切り込みの縫い代がほつれないように、マチ針を刺す位置に注意します。)
- もう一方(ミシンの押さえ金で固定されていない方)の切込みの端は、バインダー布の端と合わせて固定します。
下記の画像のようなイメージで、縫い合わせていきます。
縫い溜まりの手前までは、スムーズにそのまま縫えます。
縫い溜まり手前まで来たら、目打ちを使って幅がずれないように押さえたり、タックができてしまわないように少しずつ布を後ろに逃がしながら、少しずつ縫い進めます。
5mm幅のまま、切込みの中央(切込み止まり)の「ほつれ止めステッチ」の真上を縫えるように、注意しながら進めます。
中央部を超えたら、もう一方の端までは、またスムーズに縫えます。
縫い終わった状態です。
中央部は、このように縫えています。
- 切込みが浅くなる中央付近も、「ほつれ止めステッチ」よりも外側を縫えています。(なので、ほつれにくい)
- 「切込み止まり」の位置は、ピッタリ同じ位置に合わせて縫えています。(浅いとほつれやすくなるし、深すぎると出来上がりが不格好になりやすいです)
- タックができていないかも、確認しています。
切込みを開いた状態です。
表に返して、アイロンで折っていた折り跡の通りに、バインダー布を折り畳んでいきます。
バインダー布を四つ折りにして、縫い代を挟んでいきます。
先ほど縫ったステッチを隠すように、折り畳んだバインダー布を被せます。
表(ステッチで縫い留められている方)から、マチ針で固定します。(※ステッチの上を留めるように、マチ針で固定します。)
裏側もとり落とさないように、固定できているか確認します。(同じ幅で四つ折りにしているので、同じバランスで留まっていると思います。)
ミシンで際(きわ)を縫っていきます。(コバステッチ)
- 先ほどのステッチの真上を、重ねて縫うつもりで、コバステッチをします。
- 指先をフチに添えることで、「布の裏側にあるバインダー布の端が、きちんと真下にあるかどうか」を指先の感覚で確認しながら縫っていきます。(裏側を縫い落さないために)
(※指の感覚だけでは心配な場合は、マチ針の固定をした後に、「しつけ糸」でしつけをしてから縫ってもよいと思います。)
縫い終わった所です。
裏面も縫い落すことなく、縫えました。
細かく見ると、「きちんと中縫いのステッチの真上を縫えていてめくってもステッチが出てこない所」と、「ステッチよりも浅くなりめくると中縫いのステッチが見える所」があったりしました。
ただ、この辺りは縫い代幅がある程度ある部分なので、問題は有りません。
また、「表」から見た時には、先の中縫いのステッチでしっかり固定されているため、安定感があります。
バインダー始末(パイピング始末)をした部分を裏側に出して、半分に折り畳みます。
折りたたむときは、NG画面のように内側がダブつかないように、OK画面のようにスッキリきれいに折れるように気を付けましょう。
斜め(バイヤス)の角度にして、ステッチをします。(止めるためのステッチ。しっかり返し縫いをします。)
長めに裁断していたバインダー布の、不要な部分をカットします。
アイロンで整えます。
出来上がり。(表)
出来上がり。(裏)
この後はデザインにもよりますが、タックを縫うかもしくはギャザーを寄せ、袖下を縫い合わせて筒状にして、カフスを付けていく… といったような流れになると思います。