トップスのあきが無い衿ぐりを「見返し」処理するときのやり方を説明します。
写真をたくさん使って、分かりやすく説明しています。
今回はシーチキング生地ではなく、本番生地で作成したときの画像のため、布と似た色のミシン糸を使用しています。ミシン糸の画像が見えにくいかもしれませんがご了承ください。
※「しつけ糸」や「仮止めのミシン糸」は、写真で見えやすいように布と違う色の糸を使用しています。
目次
衿ぐり・見返し部分の型紙について
下図の半袖トップスを作成しました。
今回使っている型紙について説明します。
作成例として、今回の画像で作っている服のデザインは以下のような特徴があります。
① 衿ぐりに「あき」が無い
② 前身頃の 衿ぐりに「ダーツ」がある
③ ドロップショルダーで袖の付く位置を落としたデザイン (※「見返し」には特に関係のないデザインです。)
④ 後ろの肩線にイセ分量を入れている (※「見返し」には特に関係のないデザインです。)
⑤ 半袖 (※「見返し」には特に関係のないデザインです。)
今回は、ファスナー・ボタンなどの「あき」が無いタイプの衿ぐりです。そのため「衿ぐり」の寸法は、頭が通せる大きさになっています。
縫い代は、各1cmずつ付けています。
ただし、裾だけは縫い代2cm付けています。(※裾の縫い代は、どんな裾処理をするかで変わります。場合によっては縫い代を3~5cmくらい取ることもあります。)
「見返し」部分の型紙についてです。
前身頃の衿ぐりにダーツが入っていますが、見返し部分の型紙を書くときは、ダーツをたたんで閉じた状態で書きます。
身頃の衿ぐりの出来上がり線から4cmの幅をとり、身頃の衿ぐりと平行に線を書きました。下図の水色のラインの線です。
(見返しの幅は最低でも3cmは有った方がよいです。大体3~4cmくらいで取ることが多いです。)
見返しの縫い代は、「衿ぐり」と「肩線」には各1cm縫い代を取ります。(身頃の縫い代と同じ)
画像の水色のライン(見返しの外周になる部分)は、ロックミシンを掛けて始末するため縫い代は必要ありません。
今回の作成例の写真では、身頃の型紙を「半身」で「輪(わ)」にした状態のまま使用していますが、
実際には、下記図のように小さいパーツは左右対称に広げて「両身」の状態で型紙を作る方がよいです。
※小さいパーツで「半身」の状態で作ると、少しでも型紙がずれた角度で配置して裁断してしまうと、いざ生地を広げた時に衿ぐりが鋭角になっていたり、逆にカーブがゆるくなっていたり、と角度が変わってしまう恐れがあります。
袖の型紙は、見返し部分には関係ないので、図は省略します。
身頃の裁断・印付け
「前身頃」と「後ろ身頃」を裁断します。
半身の型紙なので、中心線を境に「輪(わ)」の状態になっています。布も二つに折って、中心線を合わせて型紙を配置します。
裁断した所です。
印付けは「切りじつけ(切りび)」で行いました。
切りびについて。出来上がり線を「しつけ糸」で縫って印とします。(ダーツなども印ししておきます。)
切りびの糸が抜けないように気を付けて、そっと型紙を外します。
輪(わ)にした状態の布2枚いっしょに、糸が通っています。糸が抜けない程度に上の布を持ち上げます。
布の間の糸を、中間で切ります。
糸が抜けにくくなるように、指などで押さえて糸を倒します。これで出来上がり線の印つけができました。
切りじつけが終わって、布を広げた状態です。
前身頃です。(今回は前身頃の衿ぐりにダーツがあるデザインになっています。)
後ろ身頃です。
身頃の「肩線」を縫う & 「ダーツ」を縫う
「前身頃」と「後ろ身頃」の肩線にロックミシン(裁ち目かがり)をします。
まずは、前身頃のダーツを縫っておきます。(※基本的にダーツがある場合は、ダーツをはじめの内に縫います。)
ダーツの中心でたたみ、印を合わせてマチ針で固定します。
ミシンでダーツを縫います。(ミシンで縫った後は、ダーツ部の「糸じつけ」は要らないので抜き取っておきます)
裏面からアイロンを掛けてダーツを倒します。
下の画像は、表から見たダーツです。
ダーツのやり方の詳細については下記記事で説明しています。
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参考★ダーツの縫い方
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今回のデザインでは、前身頃の肩線よりも、後ろ身頃の肩線を少し長くしています。
この少し長い分量は、背中の肩ダーツの代わりに入れたイセ分量になります。なので、前身頃の肩線の長さに合わせてイセて短くします。
ギャザーを寄せるのと同じ工程の作業をします。
ただしギャザーと違うのは、しわやタックができないように寄せることです。
ミシンの上糸を弱めます。そして、ミシンの針目も粗く(ミシン目が長くなるように)設定します。
縫い位置は、出来上がり線よりも1~2mm程度、外側(縫い代側)にずらして縫います。
糸を引っ張れるように、縫い終わりの糸は長めに10cmくらい伸ばしてカットします。
(縫い始めは同様に糸を10cm程度伸ばしておくか、もしくは2針程度返し縫をするのでも可。)
今回の場合は、縫い始めは軽く返し縫をしています。
10cm程度残しておいた縫い終わりの糸を引っ張って、肩線の長さを調節していきます。
「前身頃」の肩線と同じ長さになるまで、糸を引っ張って布を寄せて「後ろ身頃」の肩線の長さを短くします。
タックやギャザーのようにならないように、シワが寄らないように注意します。
次は肩線を縫い合わせていきます。
「前身頃」と「後ろ身頃」の肩線を合わせて、マチ針で固定します。
ミシンで肩線を縫い合わせます。(※縫い合わせた後に、イセるために縫った粗縫いの赤いミシン糸は抜き取りました。)
アイロンで縫い目を落ち着かせてから、肩線の縫い代をアイロンで割ります。
肩線を縫い合わせたところです。
これで、身頃の「衿ぐり」の形ができました。
※ちなみに、伸びやすい生地の場合には、衿ぐりに伸び止めテープも貼ってもよいです。
今回は、貼っていません。
「見返し」の準備|裁断・印付け・接着芯貼り・肩線縫い合わせ・端の処理
次は「見返し」部分の説明に移ります。
見返しを粗裁ちして、接着芯をはる。(※「粗裁ち」=実際に必要な大きさよりも少し大きめに適当にカットしています。)
型紙の説明のときにも述べたように、
今回の作成例の写真では、身頃の型紙を「半身」で「輪(わ)」にした状態のまま使用していますが、
実際には、下記写真のように小さいパーツは型紙の時点から左右対称に広げて、「両身」の状態で裁断する方がよいです。
※小さいパーツで「半身」の状態で作ると、少しでも型紙がずれた角度で配置して裁断してしまうと、いざ生地を広げた時に衿ぐりが鋭角になっていたり、逆にカーブがゆるくなっていたり、と角度が変わってしまう恐れがあります。
半身でやる場合は、角度が変わってしまわないように、輪(わ)の部分の辺をしっかり合わせて裁断しましょう。
型紙をいったん布から外して、接着芯生地に型紙をセットします。
接着芯も同様に粗裁ちします。(※接着芯も粗裁ちしていますが、さっきの布よりも心持ち数mm小さめに粗裁ちしています。)
粗裁ちした見返しパーツたちです。
粗裁ちした生地を裏面を上にして広げます。
その上に接着芯を乗せます。(※ザラザラした糊が付いている接着面を下に向けて乗せます。)
アイロンで接着させます。
アイロンはすべらせず、上から5秒くらいプレスするようにします。
生地の端っこから少しずつ行います。一か所くっつけたら、アイロンを上に浮かせて、次の場所をまたプレスする、という感じで接着芯をくっ付けていきます。
すべらせるように動かすと、シワができたりズレたりしてしまうので、気を付けましょう。
接着芯が貼れました。
その後もう一度、型紙を生地に付け直します。
衿ぐりの出来上がり線を切りびで印をつけて、改めてキレイに裁断をしました。
(※見返しは、衿ぐりと肩線の位置に、1cmずつ縫い代を付けて裁断しています。)
裁断し終えたところです。
(後ろ身頃用の見返し)
(前身頃用の見返し)
「見返し(前)」と「見返し(後ろ)」の肩線を縫っていきます。
肩線の印を合わせて、マチ針で固定します。
ミシンで縫い合わせます。
見返しの外側の端は、しっかりと端まで縫います。
内側の端(衿ぐりの縫い代側)は、出来上がり線より5mmくらい先まで、縫い代の途中まで縫います。(カーブ具合によっては、縫い代を少し短めに切ることもあるので、数ミリ縫い代をカットしたとしても返し縫いがなくならない位置までを縫います。)
肩線の縫い代をアイロンで割ります。
※「見返し」の肩線にロックミシンをするかどうかについて。
見返しの肩線は、基本的には布が合わさって隠れる場所なのでロックミシンはしなくてもよいです。
ただし、ほつれやすい生地ならばやっておいた方がよい場合もあります。
ちなみに、今回の見返しの肩線にはロックミシン(裁ち目かがり)はしませんでした。
肩線を縫い合わせた所です。見返しの衿ぐりが形になりました。
端がほつれないように、「見返し」の端(外周)にロックミシン(裁ち目かがり)を掛けます。
外回りをぐるりと一周させます。
外周のロックミシン(裁ち目かがり)ができた所です。
裏から見た所です。
衿ぐりの処理|「身頃」と「見返し」を縫い合わせる
それでは、「身頃」と「見返し」の衿ぐりを縫い合わせていきます。
「身頃」を表を上にして置き、その上に「見返し」を表を下に向けて重ねます。(=中表にして、衿ぐりを合わせる)
まずは、肩線、前中心、後ろ中心といった合印をそれぞれ合わせて、マチ針で固定します。
更にそのマチ針の間も、マチ針で固定していきます。
しつけ糸で、しつけをかけます。
カーブが急な所などは、特に細かくしつけ縫いをします。
しつけをした所です。
しつけ縫いをしたので、その部分の「切りび(切じつけ)」は不要になったので、切りびの糸は取り除きました。
ミシンで衿ぐりを縫い合わせていきます。
布目がバイアス方向(斜め)になっている箇所は特に生地が伸びやすいので、引っ張って伸ばしてしまわないように注意して縫います。
(※きれいなラインで縫えるように、身頃の生地を上にして縫っていきます。)
衿ぐりを一周縫ったところです。
衿ぐりのしつけ糸を外します。
衿ぐりの1cm取っている縫い代を、7mm~8mmくらいになるように縫い代をカットしました。
カーブがゆるやかな時はカットしなくてもよいですが、カーブが急な場合は、縫い代を少しカットすると見返しをひっくり返すときに落ち着きやすくなります。
(※ただし、短くし過ぎないように注意します。)
カーブに対応するために、全体的に縫い代に切込みを入れます。
切込み同士の間は、カーブがキツイ所は間隔を狭めに1cm間隔で切込みを入れます。
カーブが緩やかなところは、切込みの間隔は2~3cmくらいで大丈夫かと思います。
※切込みの深さについて。
出来上がり線から3mmは残すようにします。
ミシン目のギリギリまで深く切込み過ぎてしまうと、生地が裂けたり、カクカクしたカーブになってしまったりと失敗の原因になります。
見返しをひっくり返すために、アイロンを掛けます。
まずは、身頃の裏側(表になる方)を上に向けて、縫い代を出来上がり線丁度で折りたたみます。
ミシン目丁度で折って、アイロンを掛けます。
衿ぐりの縫い代を折って、アイロンを掛けた所です。
「見返し」を身頃の裏側へ、ひっくり返します。
見返しを裏側に折りたたんで、1mmだけ控えて、キセがかかるようにして、アイロンを掛ける。
アイロンを掛けたところです。
裏から見た時、縫い目よりも1mm裏側に控えている形になります。
表から見た所です。
裏に1mm控えることで、表から見た時に、縫い合わされた所が見えないきれいな衿ぐりになっています。
「見返し」を縫い代に固定する|星止め
衿ぐりが出来たので、後は「脇線を縫い」、「裾の処理をして」、「袖を作って、袖付けをして」、下記の状態になります。
(※「見返し」に関係ない作業なので、説明は割愛しました。)
ここまで出来たら、後は、見返しを縫い代へ留めたら完成になります。
見返しをそのままにしていると、ひらひらと衿の外へ出てきてしまいますので、そうならないように縫い代へ糸で縫い付けて置きます。
手縫い糸(もしくは服を縫ったのと同じミシン糸)で「見返し」を肩線の縫い代などに縫い付けて留めます。
まずは、見返しがずれないように、留める位置にマチ針で固定します。
※縫い付けるときには、見返しの位置に注意します。
変な所に縫い付けると、表に返した時に見返しの位置がおかしいと引っ張られてひきつってしまう場合があります。見返しが綺麗に落ち着く位置に縫い付けます。
下図では、「肩線の縫い代」に見返しを縫い付けています。
表に糸が出ないように、縫い代だけに縫い付けます。
縫い代に「見返し」を留めた所です。
今回の場合は、前見頃の衿ぐりにダーツもあるので、「ダーツの縫い代」にも縫い付けて固定しました。
これで完成です。
(前身頃の裏から見た所です。)
(後ろ身頃の裏から見た所です。)
以上で、見返しが無事につきました。