ファスナーの付け方

パンツの前開きファスナーの付け方・縫い方(持ち出し、見返し、ファスナー付け)

パンツ(ズボン)をファスナーあきで作りたい方や、パンツの「前開き」の縫い方に悩んでいる方へ、スムーズに縫えるように、分かりやすく手順をまとめました。

面倒に感じがちな前開きファスナー付けですが、写真付きで丁寧に解説していますので、この記事を読むだけで簡単に実践できます。

 

※画像では、見えやすくする為にあえて違う色の糸やファスナーを使用しています。

 

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1・型紙に縫い代を付ける

今回は左前身が見返し側(上前)、右前身が持ち出し側(下前)で作っています。

左右の決まりはないので、上前・下前が左右逆でも構いません。

ただ、右手でファスナーの上げ下げをしやすいのは、こちらの作りだと思います。

 

前開き部分の、型紙の縫い代などの書き方

まずは、前開きを縫う為に必要な、「縫い代」や「ファスナー位置」などの型紙の書き方を説明します。

下記写真のように、前見頃の「前開き部分」のみを切り出した用紙で説明します。

 

まずは、出来上がり線の周囲に1cmの縫い代を付けます。

 

ファスナー位置を決めます。(今回は長めのファスナーを使って前開きを作り、不要な分は後でカットします。)

  • まずはファスナーを付けたい長さを決めて、「ファスナー留め具の位置」を書きます。
  • 「スライダー上端の位置」は、出来上がり線より0.5cm下になります。

※今回は、ファスナーの長さ(「上端の位置」から「留め具の位置」までの長さ)は、15cmで書きました。

 

ステッチ位置を決めます。
3cmほど幅を取り、ステッチを入れる位置を決めます。

  • 幅は、基本は3cm前後(2.5~3.5cm位)が多いです。今回は、3cm幅で設定しました。
  • ステッチ止まりは、ファスナー留め具位置より1~1.5cm下にします。
    通常は1cmで良いと思いますが、家庭用ミシンで縫う場合は、縫うときに留め具が押さえ金に当たりジャマになる可能性があるので、心配な場合は1.5cmくらいで書いても大丈夫です。今回は、留め具に厚みのないファスナーだったこともあり、1cmで設定しました。

ちなみに、この「ステッチ」のことです。

 

ここまでの情報を、写し紙などを使って別用紙に書き写します。(私はスキャナでコピーしました。)

そして、ステッチの横を0.5cm大きくします。これが「見返し」というパーツになります

 

次に、この「見返し」をまた別の用紙に書き写します。今度は「持ち出し」というパーツの型紙を作っていきます。

  • 「見返し」の端に、0.5cm幅を足します。
  • 下部も「見返し」のカーブに合わせて、少し斜めにした線を引きます。カーブ止まりから0.5cm下の位置に書きます。

 

この上に、ファスナーを「スライダー位置」と「ファスナー留め具位置」を合わせて置いてみます。

もし、下の写真の左端のように、ファスナー下部が「持ち出し」からはみ出る場合は、持ち出しの長さを「ファスナーが隠れる長さまで」伸ばします。

 

その後、鏡写しで左右対称の状態になるように、書き足します。

 

下にも、1cmの縫い代を書き足します。

 

これで「見返し」と「持ち出し」の型紙が出来上がりました

  • 下記画像の「水色」のところは縫い代1cmを表しています。
  • 「見返し」と「持ち出し」は、裏面に全面に接着芯を貼るようになります。

 

前見頃の縫い代に戻ります。ステッチとファスナー位置までは、最初に描きました。

次は、縫い代1cmのところから、更に0.5cm縫い代を追加します

持ち出しの「ファスナー留め具の位置」から「下部の出来上がり線」までの長さを測ります。

先ほど「前見頃」に追加した0.5cmの縫い代を、同じ長さまで伸ばします。

 

これで「前開き」の縫い代が完成しました。

 

因みに、下記写真の「青い部分」の0.5cm増量分の縫い代は、「右前身(持ち出しを付ける側)」にだけ必要です。

0.5cm増量(計1.5cmの縫い代)の型紙で、一度に両身(左右)の生地を裁断してから、「左前身(見返しを付ける側)」の不要な縫い代0.5cmは後からカットするようになります。

では、型紙が準備出来たら、実際に縫ってみましょう。

 

2・生地の裁断をする

パーツを裁断します。

裁断時には、ノッチなど必要な合印も付けます。私は前開きの「あき止まり」や「ファスナー上端位置」にはしつけ糸で印をしたりしています。

 

前身頃は同じ型紙で、両身分(右前身頃と左前身頃)を2枚いっしょに裁断します。

 

後ろ身頃も、両身をいっしょに裁断します。

 

「持ち出し」と「見返し」は、粗裁ちした布に接着芯を貼ってから、正確に裁断します。

左の細いパーツが「見返し」。右のパーツが「持ち出し」です。

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3・「持ち出し」と「見返し」の準備

持ち出しを、中表になるように半分で折ります。

下部を縫い代1cmで地縫いします。

 

持ち出しを表にひっくり返します。

目打ちを使って、角や端を出し、アイロンで整えます。

 

持ち出しの「わ」になっている方とは逆側の端を、ミシンで仮縫いして閉じます。

(写真左下の、表にひっくり返した時に縫い代がちょこっと飛び出している部分はカットしました。)

 

写真のピンク部分をロックミシン(裁ち目かがり)します。

これで準備ができました。

 

4・身頃を縫う & 裾の処理

まずは、前見頃のうち「左前身」だけ、あき部分の縫い代を0.5cmカットします。

前開き部分の0.5cmプラス(計1.5cm)の縫い代は、「右前身(持ち出しを付ける側)」にだけ必要です。

なので、同じ型紙で一度に両身パターンを裁断してから、後から不要な「左前身(見返しを付ける側)」の方の縫い代を0.5cmカットしています。

 

前開きの縫い代に、伸び止めテープを貼ります。

 

裾を三つ折りにするのでアイロンで折って、折り跡をつけておきます。

前身の左右と、後ろ身の左右、計4枚すべて同じように折っておきます。

 

後ろダーツを縫って、中心線側に倒しました。

 

「脇線」と「内股線」をそれぞれ地縫いします。

前身と後ろ身の「脇線」を中表で合わせて、マチ針で固定します。

「内股線」も同様に合わせて、マチ針で固定します。その後、ミシンで縫い合わせます。

 

脇と内股を縫い合わせた所です。2本の筒状のものが出来上がりました。

 

脇と内股の縫い代にロックミシン(裁ち目かがり)をします。

片倒しにするので、2枚一緒にロックミシン(裁ち目かがり)を掛けています。

裾は三つ折りにするので厚み分散のために、裾だけ三つ折り用の折り目位置で縫い代に切込みを入れて、縫い代を割ります。

裾だけは、片側の縫い代だけにロックします。

 

ついでに股グリにもロックミシン(裁ち目かがり)をします。

「見返し側の前開き」の部分は、ロックしていません。

 

脇と内股の縫い代を、アイロンで片倒しします。

 

裾の方の、切込みを入れた縫い代は割り開きます。

先にアイロンで付けていた「三つ折り跡」のとおりに裾を折り畳みます。

 

裾にステッチを掛けます。

 

裾の処理(三つ折りステッチ)ができました。

 

5・股グリを縫う

パンツを中表に合わせます。

(片方の筒を中表にして、その中にもう片方の筒を外表の状態のまま突っ込みます。)

 

きれいに重ねた状態で、股グリを合わせます。

 

「あき止まり(ファスナー止まり)」の合印を合わせて、股グリをマチ針で固定します。

内股の縫い代は前側に倒しています。

あき止まりは左右で縫い代の長さが違います。ずれないように合印をしっかり合わせています。

 

「あき止まり」の1cm下から、股グリを縫います。

股ぐりはカーブが掛かっていますが、クセ取りの為まっすぐ伸ばすような感じで縫います。

強度を上げるため、股グリは2回縫います

 

6・前開きを縫う

左前身に、見返しを中表で合わせます。

  • 左前身の縫い代は最初に0.5cmカットしたので、1cmの縫い代になっています。
  • 逆側の右前身の縫い代は開いて避けておきます。

 

縫い代は1cmで付けていますが、0.8cmで縫い合わせます

後ほど0.2cm控えて折るようになるため、ここでは0.8cm幅で縫います。

縫い付けたところです。

 

端止めをします。

(見返しの端(角)を、三角に折り、ミシンで縫い留めます。)

 

見返しを開き、裏コバステッチをします。

(見返し側に縫い代を倒し、際にステッチをします。)

裏コバステッチをしたところです。

 

股グリの縫い代を、アイロンで割ります。

タオルを巻いたものなど、丸みのあるものを下に敷いてアイロンをかけるとよいです。

 

アイロンで見返しを折ります。0.2cm控えて折ります。

先ほど0.8cmの所で縫い合わせて、今0.2cm控えて折っています。

なので、0.8+0.2=計1cm で縫い代1cm分となり、これで前身の出来上がり線の位置で折り畳めていることになります。 

 

右前身(持ち出しを付ける部分)の縫い代を1cm折る

右前身のあきの縫い代は1.5cmあります。

1cmで折るので、残りの0.5cmは、左前身と重なるようになります。

この重なりがあることで、パンツが出来上がった時、表から見た時にファスナーがきちんと隠れてくれます。

 

持ち出しにファスナーをマチ針で固定します。

  • 今回、ファスナーは長めのものを使用しています。後で不要な長さはカットする予定です。
  • ファスナー止まり(あき止まり)の位置にファスナーの止まりを合わせて置きます。
  • 横幅は、縫い代の1cm幅を取った上で、残りのファスナー帯の務歯までの幅をどの程度にするかを考慮してファスナーを置く位置を決定します。

今回、持ち出しサイズを決めるとき、ファスナー止まりより下のファスナー帯の長さを考慮し忘れて、ファスナー帯の下部が持ち出しからはみ出てしまいました。

本来は持ち出し内に収まるサイズが理想です。(型紙を描くときに持ち出しの長さを小さくし過ぎてしまいました。)

 

ファスナーを持ち出しに仮止めします。

(仮止めなので、ファスナーの端辺りを縫います。)

 

「右前身(持ち出しを付ける側)」と「持ち出し」の合印を合わせて固定します。

左前身(見返し)は避けておきます。

 

ミシンで、縫い合わせます。(端を縫います。)

 

右前身(持ち出しを付ける部分)の縫い代は、先ほどアイロンで1cmの所で折り跡を付けています。

その位置で縫い代を折り返して、縫い付けた「持ち出し」を開きます。

 

際をステッチして、持ち出しを付けます。

あき止まりの下(ファスナーの最後)まで、しっかり縫います。

 

避けていた見返しを戻して被せます。

 

この時、ファスナー付けの上端の合印を合わせます。

 

合印を合わせた状態で、「見返し」と「ファスナー」をマチ針で固定します。

持ち出しまでマチ針が刺さらないように、持ち出しとの間に定規を差し込んでからマチ針で固定しました。

 

固定した後に、表から見たところです。合印を合わせて固定しているので、前開きが正確に0.5cm重なっています。

 

見返しとファスナーだけを縫い合わせるため、「持ち出し」や「パンツ本体」は、めくって避けておきます

 

「ファスナー」と「見返し」を縫い合わせます。(ファスナーの端を縫います。)

この時、ファスナー上端の位置にスライダーを合わせると、ファスナー帯が自然と開いた形(ハの字)になります。

ファスナー上部は、このまま「ハの字」に広がったまま縫い付けます。

こうすることで、ファスナーを閉めた時でもスライダーのための空間が確保されるので、この部分のシワが出にくくなります。

 

縫い付けたところです。

 

続いて、先ほどのステッチと務歯の間にもう1本ステッチして、見返しにファスナーを止めます。

 

2本目のステッチが入ったところです。

 

「持ち出し」をマチ針で固定して避けます。

 

表にステッチをしていくために、ガイドのために、薄くステッチの印を書きます。

表に出て目立つ所なので、なるべく薄くて出来上がりに響かない印にしています。

 

印のとおりに、ミシンで縫います。

この裏側にある「見返し」をきれいに整えてから、ステッチします。

ステッチをした所です。

 

避けていた「持ち出し」を戻します。(見返しに被せる形になる。)

 

「ステッチのカーブの先端辺り」と「カーブ部分」の2箇所に、表から「閂止め(かんぬきどめ)」をします

(閂止めができない場合は、1cm位のステッチを何往復か重ねることで代用できます。)

閂止めは、持ち出しを固定するために行います。

 

閂止めをした所です。

 

これで前開きが完成しました。

 

ファスナーを長めのものを使用したため、はみ出している上部はでカットします。

 

 

前開きファスナー付けが無事に出来上がったので、ウエストベルトを付ければ完成します。ベルト付けは下記の記事で説明しています。

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